三國湊町家PROJECT
Interview #5 春田和宏さん・尚子さん

町づくりを一緒に楽しみたい。
アメリカ帰りの夫婦が開いた雑貨店。

1930年代にはすでに建てられていたという、懐かしい佇まいの土蔵。
三國湊町家プロジェクトが管理する「和泉金物店の蔵」に、アメリカのアンティーク雑貨店が誕生しました。
アメリカから帰国したご夫妻が開いた空間は、湊町に新しい風を吹き込んでくれそうです。

# 三国で働く

アメリカで集めた一点もの。
個性的で奥が深いアンティーク雑貨。

レトロモダンな壁時計、ミルクガラスが可愛いヴィンテージ食器、幾何学模様が美しい照明。個性的なアメリカンアンティーク雑貨のお店が、2015年12月25日にオープンしました。湊町の路地裏に店を開いたのは、アメリカから帰国して間もない春田和宏さん・尚子さんご夫妻。尚子さんの故郷である三国に、夢だった雑貨店を開きました。

「高校生のころからアメリカンアンティーク雑貨が好きで、輸入雑貨店を開くことが夢でした。50〜80年代のものが好きで、少しずつ集めました」

商品は、尚子さんが現地のガレッジセールなどで10年間かけて集めたもの。アメリカから持ち帰ったコレクションは1000点以上にのぼり、その一部がお店に並んでいます。

「知らない間に雑貨が増えているんですよ(笑)。部屋にさりげなく飾るから、いつの間にか僕も好きになっていました」

父親が骨董収集家という環境で育った和宏さんにとって、アンティーク品は身近なものでした。そのためか、尚子さんが集めるものにも自然とひかれていったそうです。アメリカのカリフォルニア州で出会い、2011年に結婚した2人。一緒に暮らすうちに、雑貨店はいつしか2人の夢となっていきました。

「時代によってデザインが違うところがアンティークの面白さ。いま店にでているのは僕ですが、ゆくゆくは妻に店に立ってもらい、僕は裏方に回りたいですね」

和宏さんの言葉を受けて「でも、買い付けには一緒に行きたいな」と答える尚子さん。取材した日は、オープンから2週間後のこと。これから夫婦二人三脚で店づくりを進めていきます。

# 三国を選んだ理由

入居者募集は運命のタイミング。
伸びしろのある町の方が面白い。

アメリカのカリフォルニア州で出会った春田さんご夫妻。和宏さんは岡山県出身で、東京で働いた後にアメリカへと移住。英語を学んでいた尚子さんと出会い、2011年に結婚しました。アメリカで暮らし働いていた二人は、語学が堪能。自分たちの経験を生かし、いつか日本に帰国し起業しようと考えていました。

「人脈もあるし、日本の生活に慣れるという意味でもスムーズだろうなと思ったので、東京に戻るつもりでいました」

それが、なぜ三国を選択したのか。そこには、運命ともいえるきっかけがありました。

「そろそろ日本に帰ろうかと考え始めた時に、インターネットで三國會所が蔵の入居者を募集していることを知りました。募集が始まったのが2015年10月。帰国を予定していた時期と同じタイミングでした」

インターネットを通じて、三国の町づくりを見ていた尚子さん。同級生が紹介したFacebookページから、蔵の入居者を募集していることを知りました。それは、ちょうど2人が帰国後の生き方を模索していた時期。絶妙のタイミングで人生の次なるステージを尚子さんの故郷に見つけました。

「町家プロジェクト事業がなければ、三国という選択肢はなかったかもしれません」

尚子さんにとっては三国は故郷ですが、和宏さんにとっては過去に2回しか訪れたことがない未開の地。尚子さんと知り合うまでは、三国はおろか福井県のこともよく知りませんでした。

「三国は地元の岡山よりも田舎ですが、そこに魅力を感じました。三国はまだ出来上がっていない、町づくりの途中の町。だからこそ、僕たちも一緒に町を作っていけるのではないか。そこに面白さを感じ、やりがいを見出せると思いました。のびしろのある町の方が楽しいじゃないですか」

こうして2人は町家プロジェクトへの応募を決めました。とはいえ、三国は人口の少ない町です。「三国でお店をやっていけるのか。店を開くなら東京の方がいいのではないか」帰国直前、尚子さんは不安に押しつぶされそうになったそうです。そんな尚子さんを説得し背中を押したのは、東京に移り住むことを考えていたはずの和宏さんでした。

「アメリカに住んでいたころ、彼女から三国の魅力を何度も聞かされていました。それくらい彼女は三国が好きだし、昔からの友人も多い。彼女にとっても三国で暮らすことが良いと思ったので、僕が押し切りました(笑)」

尚子さんは生粋の三国っ子、三国の町が大好きです。その思いが知らず知らずのうちに和宏さんに伝わり、三国への移住を後押したのです。

# 三国のいいところ

ずっと三国が好きだった。
遠く離れていても、自慢のふるさと。

「三国には海も山も美味しい食べ物もあります。春夏秋冬、季節のうつろいもちゃんとある。曇り空は好きではないけれど、それでもやっぱり落ち着きます」

尚子さんに三国の良さを尋ねると、いくつもの言葉が続きます。どんなに遠く離れていても、尚子さんにとって三国はずっと自慢のふるさとでした。

「18歳で三国を離れましたが、三国のことは大好きでした。三国は『暮らす場所』として一番いい。昔ながらの店もちゃんと残っている一方で、新しい店も増えている。そうした町づくりにも共感しました」

「カリフォルニアにも少し似ているよね。アメリカでは家を壊さず、リノベーションして使い続けるのが一般的。古い建物を大事にします。それに、どちらも海が近い。サンセットビーチもありますよ」

そういえば三国にある海水浴場には、カリフォルニアのビーチと同じ名前が付けられています。北前船で栄えた風情ある湊町と、明るく爽やかなカリフォルニア。2人の話を伺っていると、正反対に思える2つの町に共通項が見えてきます。

# 三国での暮らし

大切な人が三国を好きになる喜び。
三国の魅力をたくさん教えたい。

オレンジ色の光が川面をきらきらと照らし、幻想的な風景をつくりだす九頭竜川河口の夕暮れ。この光景を臨む川沿いの道は、尚子さんが三国で最も好きな場所。川沿いにある歴史深いお寺で生まれ育った尚子さんにとって、大切な景色です。

「まだ、あの景色を見せたことがないんです。それから、三国祭と三国花火。これも早く見せてあげたい」

大好きな三国の町を、大切な人が少しずつ好きになっていく。その姿を横で見ることがとてもうれしいと、尚子さんはにっこり微笑みます。

「今から三国祭が楽しみです。参加してみたいな。まずは2月、節分の豆まきに行きたいです」

「祭りは見るだけでなく、ぜひ参加して!」と尚子さん。和宏さんが山車をひく姿を今から心待ちにしている様子です。

「三国の人はオープンで馴染みやすい。町づくりにも参加したいので、何かお手伝いできることがあれば声をかけてください」

ただ三国で働くだけではなく、町のにぎわいも作りたいと話す和宏さん。今年の三国祭では、ハッピ姿の和宏さんを見られるかもしれません。この雑貨店を拠点に、湊町に新しい波を起こしてくれそうなご夫妻でした。

American slut
福井県坂井市三国町北本町4-3-6
営業時間 11:00〜18:00
火曜定休
TEL 0776-97-8215