三國湊町家PROJECT
Interview #6 小川智寛さん・川﨑里香さん

三国に新しい美味しさを届けたい。
東京では手にできない余裕と時間。

三国には、100年以上変わらぬ風景が多く残されています。
樹齢250年の大きなタブの木から上ハ町通りへと続く広小路もその一つ。
この通り沿いの土蔵「塚本邸」でスタートしたのが、フレンチデリのお店「HALF MOON BAY」です。
東京で活躍する一流シェフ監修の料理をテイクアウトで楽しめます。

# 三国で働く

いま事業を始めるなら、地方がいい。
福井だから実現できる形がある。

「甘エビを使ったスープや地場野菜のラタトゥイユなど。『三国といえばこの料理だよね』と言われるようなデリを確立したい。地元食材の美味しさをさらに引き出すような料理を提供します」

HALF MOON BAYの料理を監修する小川智寛さんは、坂井市丸岡町出身。東京やフランスで修行を積み、現在は東京でレストランを経営する人気シェフです。これまで数店舗を手がけてきましたが、三国での開店準備は今までとはまるで違うといいます。

「東京は店舗の賃貸料が高く、何もしなくても1日に数万円が飛んでいきます。だから、開店準備もスピード勝負。常に時間に追われながら進めていました。けれど、三国ではお店の賃貸料が10分の1ですみます。そのため時間にも余裕が生まれ、じっくりと準備を進められます。こんなにワクワクしながら開店準備を楽しむのは初めてですよ」

東京での経営は、常に競争がつきまとう。それも楽しいけれど、心がすり減ることもあると小川さん。福井では余裕をもって仕事ができるため、いつもホッとするのだとか。

「東京で今から新しいことを始めるなんて考えられない。地方は賃貸料が安いので、他のことにお金をかけられます。この蔵の雰囲気に合わせて商品ケースを特注することもできました。東京の人は、もっと地方に目を向けるべきですよ」

いきいきとした表情で話してくれたのは、HALF MOON BAYをプロデュースする株式会社マイナーリバーズの共同代表を務める川﨑里香さん。東京で通訳会社を経営するかたわら、三国で飲食事業を展開するにあたり小川さんと会社を設立しました。東京よりも開業資金やランニングコストを低コストで抑えられることは、地方で事業を始める大きなメリットだといいます。

今春、お二人は三国町にもう一店舗オープンさせる予定です。三国町出身で世界的に活躍する指揮者・小松長生氏の生家である海沿いの古民家を再生したレストラン。けれど、1年前は福井で飲食事業を手がけるとは想像すらしていなかったそうです。

# 三国を選んだ理由

「何もない」わけではない。
東京にないものが福井にはたくさんある。

川﨑さんが初めて福井を訪れたのは、2014年の冬。小川さんは福井を案内しながら、「何もないところだから楽しめないのでは」と心配だったそうです。けれど、そんな心配をよそに、川﨑さんの心は大きくゆさぶられました。

「山あいの雪景色をひと目見て、福井が好きになりました。小川は福井には何もないと言っていましたが、私はたくさんあると感じました。東京にはないものが福井にはあります。」

この素晴らしい福井で、何かできないだろうか。そう考え始めた時に、さらに大きなきっかけが訪れます。それは三国町出身の指揮者、小松長生さんとの出会いでした。東京のレストランに来店した小松さんに、自分の生家を使わないかと誘われます。運命のタイミングに背中を押され、古民家を見るために再び三国へと向かいました。

その時に建築家の紹介で湊町を歩き、町家プロジェクトの活動を知ります。ちょうど町家プロジェクトでは、詰所三國(ゲストハウス)のオープンに向けてケータリング事業の入居者を探していました。さまざまな要素が追い風となり、塚本邸の入居者募集に応募することとなったのです。

小川さんは、福井でレストランを開くことは全く考えていなかったそうです。「別荘を買って余暇を過ごすにはいいけれど、商売するとなると...」そんな小川さんを、川﨑さんは熱心に説得しました。

「普段は外国人と仕事をしているため、国際的視点からも、これからは地方の時代だという確信がありました。インバウンド事業においても、福井には大きな可能性があると感じています。それに何よりも、東京にくらべて資金リスクが格段に低い。だから、一緒にやろうと口説きました(笑)」

福井に新しい価値を生み出すために、メジャーではなくマイナーなことをやろう。みんなが無理だよと思うことにも挑戦していこう。「マイナーリバーズ」という社名には、そうした意味が込められています。町家プロジェクトから誕生したゲストハウス「詰所三國」でも、HALF MOON BAYのデリをケータリングにて味わうことができます。

# 三国のいいところ

オープンで温かい、湊町の人々。
この町だから、新しいことを始められる。

坂井市で生まれ育った小川さんは、三国は福井のなかでも空気感の違う町だと子どものころから感じていたそうです。海水浴シーズンの開放的で自由なイメージ、学生のころはおしゃれな町という印象を抱いていました。そして最近では、福井の友人たちから「三国が熱い!」と聞かされていたそうです。

「東京では考えられないほど、福井の人は親切で温かい。三国の雰囲気はオープンで、1年前までこの町を知らなかった私のことも積極的に受け入れてくれます。そして、すでに素敵な町づくりが進められられている。そうした町でお店を開けることが有り難いです」

都会で生まれ育った川﨑さんにとって、福井は「心のふるさと」という存在になっているようです。自然が豊かで、海がちかく、人々が温かい田舎町。仕事をリタイアしたら、いずれは福井で暮らすのが夢なのだとか。

「これからも東京で仕事を続けますが、できるかぎり三国に足を運びたいと思っています。三国祭や帯のまちながしなどイベント時も出店して、他では味わえない料理を提供したいですね」

川﨑さんがお店全体をプロデュースし、小川さんがそこで三国でしか味わえない料理をプロデュースしていく。「いいコンビでしょう」と川﨑さんは楽しそうに微笑みます。今後は、三国と他エリアを食でつなぐような新しいプロジェクトも考えているそうです。三国を拠点に、これからどんなことを仕掛けていくのか。マイナーリバーズの今後の展開にも目が離せなさそうです。

フレンチデリ HALF MOON BAY(ハーフ ムーン ベイ)
福井県坂井市三国町南本町3丁目3-34
営業時間 10:00〜19:00
木曜定休
TEL 0776-43-9961
website https://www.facebook.com/hmbfukui/