三國湊町家PROJECT

【レポート】3/5 三國湊まちづくりフォーラム

レポート 2017.03.28

平成29年3月5日、東京大学都市デザイン研究室三国プロジェクトとともに、三國湊まちづくりフォーラムを開催しました。
市民の皆さまはじめ、約70名の方に参加いただきました。ありがとうございました。
ここでは、東大三国プロジェクトによるプレゼンテーション資料、三国のまちづくりに関わる人たちと東大の西村幸夫教授との熱いパネルディスカッションの模様を掲載します。
三国の未来を考えるきっかけになると幸いです。長文ですがご一読ください!

第 1 部 東京大学都市デザイン研究室による研究発表
「三国の空き家の実態とまちづくり社会実験の成果」
「歴史的市街地における空地の実態に関する研究―福井県坂井市の旧三国町地区を対象として―」
東京大学都市デザイン研究室三国プロジェクト

三国の空き家の実態とまちづくり社会実験の成果.pdf
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歴史的市街地における空地の実態に関する研究.pdf
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第 2 部 まちづくりパネルディスカッション
〈パネラー〉
  伊東 尋志(えちぜん鉄道株式会社 専務取締役兼管理部長)
  下村 禎勝(みくに園)
  浜田 剛(一般社団法人三國會所 まちなみ委員長)
  八十島 一司(一般社団法人三國會所 副理事長)
  谷根 康弘(坂井市総合政策部企画情報課)
〈コメンテーター〉
  西村 幸夫(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 教授) 
〈コーディネート〉
  中島 伸(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 助教)

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中島:まず、三国の皆さんに自己紹介も兼ねてどんな立場でやっていらっしゃるか、また学生たちの発表の感想をお願い致します。

八十島:みなさんこんにちは。八十島と申します。三国會所で大和理事長と共に三国のまちづくりをやっております。三國會所の前段、三国のまちをなんとかしたいという思いから、歴史を活かすまちづくり推進協議会となって、それが三国會所になりました。そこで、勉強させてもらっていた人間です。東大の発表の通り、過去から三国がいいものを持っているのに郊外に流れる方が多くて、それから今度他町に出られる方が多くなってきてしまったという状態です。私の町内でも独居老人が沢山いらっしゃいますし、隣の家は空き家、後ろは公園、向いは駐車場です。東大生が発表した中でたくさんの空き地がありましたけどもここだけじゃないんだなと実感しました。唯一三国の町中を歩くのは三国祭ですが、そんなときに「ここも空き地になったか」と実感しています。三国はいいものを持っているので、観光客が増えるのが先か、地元が勢いづくのが先か、分からないですがなんとか町が存続するよう、なんとか衰退の減り幅が小さくなるように頑張っております。

中島:ありがとうございます。続いて、會所の若手として浜田さんにお願いします。

浜田:はじめまして、こんにちは。南末広区に住んでいます。南末広区で生まれ、大阪の三国に二年行ったほかは三国に住んでおります。三国がとても好きなので會所の活動をやろうと思い今に至っています。会所の中ではまちなみ委員会の委員長をさせて頂いています。この三年の町家プロジェクトを委員・PJメンバーと一緒になってやってきました。感想ですが、意外とまちなみを壊れることを危惧している方が多いということがわかり、僕らと同じ認識でいてくれたんだなと思って、よかったです。

中島:続きまして、下村さんです。

下村:みくに園の下村です。一昨年から、三国湊町家プロジェクトの中で、まさしく今日発表があったような空き家を活用する活動として、空き家を改装して盆栽を販売する拠点づくりで、プロジェクトを利用する立場として関わりました。また、同時にゲストハウスの運営もさせて頂くことになりました。今日は入ってくる立場の人間として意見を聞いて頂けたらと思います。先ほどの感想ですが、所有者との関係性が大事だとありました。「隣に誰が入ってくるか心配だ」とか、入る人からすると「近隣とうまくやっていけるのか、受け入れてもらえるか」というのは重要だと思います。信頼関係をしっかり気付くためにも前例としての私たちがしっかり根付いて、商いもしっかりやって、三国の港町の存続をさせていけるようないい流れを作っていけないなという責任を感じました。

中島:次は、企業の立場でえちぜん鉄道の伊東さんです。

伊東:専務の伊東です。当然鉄道会社は、公共交通機関なので生活インフラとして会社、鉄道というものが存在しています。三国では、福井新聞に駅舎の建て替えで野嶋先生によるパースが出ました。駅も含め交通機関は生活を支えるものです。その中で出来る事は何でもさせて頂くという立場です。三国は一番最初に京福から受け継いだボロボロの駅舎が今綺麗になっている三国湊駅の改修が最初でした。駅をうまく使えば住民、訪れる人も喜んでもらえると徐々に分かって来て、駅をどううまく使うかは、我々だけでなく住民含めて改修を進めていいます。今日の発表の感想ですが、我々の沿線では勝山に似ています。三国線でも、お客さんの動向にも表れていて、乗客が増え続けている中でひとりあたり移動距離は縮む一方です。傾向として、はっきり福井市内や近い所にシフトしている。ではそれでいいのかと言えば福井もそうではなく、県外に流出している。入れ子のような都市への一極集中がよく分かっています。
あとは個人的な問題とすると、まさにうちは空き家発生のメカニズムに当てはまっているんです。ただ実際我が家は両親が元気で、土日だけ趣味や子供で帰っていてそういうライフスタイルもあるかなと。先々どうしようというのは悩みどころなので勉強できればと思います。

中島:つづいては、行政の立場から、谷根さんです。

谷根:坂井市役所企画情報課谷根です。市役所で勤めています。生まれも三国、今日来られている方も小さい頃からお世話になっている方もいますが、45年三国です。大学4年だけ県外ですが、三国に戻ってそれ以来住んでいます。仕事の担当は三国のまちづくりです。今日の東大の発表ですが、発表の中でソトマワシ・ウチマワシの話、いきなり間に入る仲介業者を嫌うと言う話がありましたが、そういった調査、行政がやろうとするとなかなか町民の人が本音を言ってくれないという所があるかなと思っています。H24年に行政の職員が空き家調査を全市でやりましたが、持ち主と話して件数を数えた訳ではなく、外から見てチェックする方法でした。坂井市全域で1400軒が空き家という結果が出たが、三国の旧市街地だけで260軒でした。ということはかなりの空き家が三国のこの辺に集約されているということです。市の調査では190ぐらいだったと記憶していますが、数年でそれだけ増えているということで、いろんなところでいままでもまちづくりに携わっているが、もっともっとやらないと心配だなと感じている。

中島:西村先生には、これまでのお話を聞いてコメント、もしくはお聞きしたいことがあれば振っていただければと思います。

西村:今日私も少し街を歩いて、新しくできた店を中心に案内して頂きました。すごくここ数年で増えてきていますね。こういう徐々に色んなものが生まれてきているまちは日本でもそれなりにあって、私の知っている限りでも、奈良、長野、犬山尾道とか、ここ5年くらいで増えています。共通しているのは歴史的な資源があるということ。どこの町家でも同じように再生、ではなくて魅力、可能性があると感じるから外の人も目をつけてくれるので、そういう時期にきているのかなと思いました。東大の発表はその前の具体的な数字だから大変だなあという感じだけど、良い方向に変わってきているのかなという気がします。

中島:八十島さんに伺います。街の変化についてですが、ここ最近の変化には町家プロジェクトが大きかったのかなと思います。まちづくりの輪は広がっているのでしょうか。

八十島:たしかに、活動を起こす前は目立った新しい店舗の開店とかはそんなになかったんじゃないかと思います。あの活動で我々が改修させて頂いて、入って頂いた以上我々もなんとか客を引き込みたいと試行錯誤してやっていますが、そういう活動が認められたのか、私も商店街のメンバーなんですが新たに空き店舗を改築して店をオープンしたところが何店舗かあります。プロジェクトとは別に自発的にやっているらしいのですね。県の施策で、古い建物を改修する事に補助がでる仕組みがあったのは事実かなと思いますが。

中島:下村さん、まさにそういう形で空き店舗に入って来られて、お店同志で情報を交換したり、入りたい方にお話しを聞かれたりといったことは実際にあるのですか。

下村:そうですね、実際私の所に来てお店をやりたいという人もいます。どこかで聞いて、見せて下さい、とやりたい人が見に来るってことはあります。

中島:そういう時はどんなアドバイスというかお話しされているのですか?

下村:そんな大した話はしていません。僕は一生懸命やっているだけです。でも、そうやって見に来て頂けるというのはすごくうれしい。それだからこそ、見てくれる人もいるんだったらしっかりやらないとな、と思います。それも、自分勝手な動きではなく三国湊町がある中でしっかりやるんだ、というのは感じます。励みになっています。

中島:問い合わせがあることによって励みになると。続けて下村さんにお話し聞こうと思うのですが、元々三国の旧市街から離れたところで盆栽屋さんをやってらして、機会があって旧町内に入ってこられたと思います。ここで商売することの魅力やメリット、デメリットなどはありますか。

下村:私のやっている盆栽は、ある意味古い町と似ていて、扱うものがすごくコアで、お年寄りがやる種類の盆栽で、高価で難しく、なんとなくいいけどなかなかやろうとしない、そういうイメージで凝り固まった商品です。サラリーマンから家業を継ぐことになったのですが、イメージからなんで盆栽を販売しなければいけないんだという素人の感覚から盆栽に踏み込んだんですが、そういう感覚から入るとすごく暗い、未来の見えない市場で、そうすると新しい市場を開かないといけないです。新しい人に興味をもってもらわないと盆栽の市場が広がらないんですね。今の生活スタイルにあったり、かっこいい、こじゃれたといった見せ口でやらないといけない。そうすると女性とか若い人に開かれた店を作らないといけない、そういう店を作りたいと思っていましたが、自分で建てるのも難しいと思っていました。金沢の東茶屋に店を造ると言う人がいて話が来た。で店に盆栽を飾った時に、町家ですごい良かった。観光地なので観光客が入ってきて、そうした反応を見てるといけるんじゃないかと思ったんです。見せ方とか商品づくりを工夫して、そういう所で盆栽置いたら今まで興味ない人でも見てくれるんじゃと思って、いいなあと眺めていた。そうしてアンテナを張っていると、ひっかかるものなんですね。プロジェクトを見つけて、存じ上げてなかったんですけどすぐ応募させていただいたんです。

中島:旧市街の中で店を出すと言うのが情報発信として可能性があったということでしょうか。

下村:そうですね。こちらが求めていたから見つかったと思います。付け加えますと私のやっている盆栽は古くから、昔から繋がってきているものですが、新しい視点で新しく見せて新しい人に提供していく。三国のまちもそうだと思います。ずっと受け継がれているものを新しい形で提供すると。そこが繋がったからよかったんだと思います。

中島:実際それで客層の変化はありましたか。

下村:真逆の人がきています。父の盆栽園はいままで通りの軽トラ、たばこをふかせながらこれくれよ、の世界ですね。いま松ケ下でさせていただきているのはまったく盆栽のやったことのない初心者の方、カップルとかが来て、ワークショップをさせていただいたりしています。

中島:昨日丁度僕も寄ったら若い女性が来ていて、浜田さんもいらっしゃいました。三人でしばらく喋っていましたが、浜田さんから見てみくに園とか街の様子、変化を感じますか。

浜田:プロジェクトの物件の一つなんですが、広小路のハーフムーンベイのクラ、自分も自分の仕事場をそこにつくりたかったんです。下村さんのところに行くと羨ましいですね。

中島:どういう仕事場を作りたかったんですか?

浜田:自分の仕事は、放送設備を外で仮設で組んだりという仕事ですけど、録音したりとかもするので事務所的なものをあそこでしたい。夜遅くにまでなるので、電気をつけているといいだろうなと考えていました。でも今はそこでハーフムーンベイさんがやってらっしゃるので良かったです。
下村さんは盆栽をやってらっしゃって、前のお店は行きたかったんだけど入りづらかったです。新しいものは金額もすぐわかって手頃で、いいお店でうらやましい(笑)

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中島:ありがとうございます。今まちや人の動きが少しずつ変わってきていて可能性を感じるという話でした。では人の動きから人口減少の話にフォーカスしたいと思います。公共交通では、えちぜん鉄道から短い区間、福井にシフトしているという話がありました。一方で高齢社会になっていくと三国・福井は現在車中心社会だが公共交通の役割はどんどん増すと思います。その時に三国と駅・鉄道がどうかかわっていけるのでしょうか。伊東さん、今お考えの次の一手はありますか。鉄道がまちづくりでかかわっていけるのはどこでしょうか。

伊東:なかなか次の一手は、我々が考えているようなものは難しいです。第三セクターの鉄道会社で、ふつうは土地開発をやっているのがほとんどです。たとえば北陸鉄道とかは、阪急とか東急とか、ああいう私鉄のモデルをみてという経緯がありますが、お客さんをつくるというだけの鉄道ではとても大変です。しかし盆栽のように、若い方や女性が評価してくれるということがあります。若い女性の利用が、休日・通勤時間帯も非常に多い。1日に1、2回ですが、福井口では山手線並みに押し込んでます。女性が多いですねという言葉はよく聞くようになりました。もう一つは駅というものをもっと使ったらと考えています。我々にしてみると駅は切符を売るだけですが、もっと上手に使えるのではと思うのです。地域の人と一緒にできることもあるのではと考えています。勝山駅ではカフェをやりましたが、人が滞留するだけで場所の良さが活きると思いました。その中で生活に必要な機能がもっと組み込めたらいいのになあと持っています。駅前開発がずっと言われてきて、まあ十数年やってきても、と言われていたが、金沢駅にはお洒落なだけでなく必要な生活機能があります。福井駅にはまだそれがないです。生活していくうえで必要なものが駅の近くによっていく、またちょっと三国園の盆栽のようなもの、ああいうのがある駅というのを大切にしていきたいと思います。

中島:福井駅の改修、西村先生も関わっているが、駅とまちづくりをどうつないでいくか、展望など、使っている人は駅に期待する可能性とか、三国駅も着手されていますが、考え方ありますか。

西村:私も福井駅を変えるということで内藤先生にお願いしてデザイン検討委員会で作っています。町をすごく変えることになるのでインパクトがあります。いい回遊がうまれるようにしたいと思っていて、特に福井の場合は北側の歩行者のガード下、東横インのほうが通れるようになります。また県庁の入り口の方がきれいになれば回遊できるようになると思います。そうすると北・東口全体に、今はちょっとアクテビティはあんまりないですが、動きが出るのではと思っています。駅は、そこだけじゃなくそこが中心になって周りにすごくインパクトを与える。すごくいい方に変える大きな機会。カフェとかもやってらっしゃるし、情報の発信の場になるのではと思います。

中島:三国駅もまさに動いているところなのでコメントは難しいと思いますが、地元の大学からということで、会場にいらっしゃっている福井大学の野島先生にもお話いただきましょう。(拍手)

野嶋:とても勉強になりました。東大の発表は現場を歩いている、なんとなくわかっているようなことを論理的に示していて共通認識が得られたと思います。色々なお話がありましたが、伊東さんが言われた、大きな流れ、一極集中の流れを見なきゃいけないというのは非常に大事です。その中で戻ってくる人もいるというあたらしい流れもあります。発信しながら"生活文化"を作りながら新しい商売だけでなく色んなことをやろうという人が来ている流れのモデルもできているなあと思いました。そのなかで八十島さんのおっしゃったまちづくりというイメージが移住者を呼び寄せていて、連鎖的にということもあるし、西村先生のおっしゃった時期に来ているというのもわかります。生活スタイルの大きな流れがあって、大都市からくるという流れがあって、この時期を連鎖的に大きく伸ばしているという時期なのかなという気がしました。

中島:ありがとうございます。駅の方は乞うご期待ということで。今のお話につないで、會所の二人にお聞きしたいと思います。新しい"生活文化"を下村さんは作っていると、私もそう感じます。歴史文化のまちづくりをどうにぎわいや観光につなげるかというところで、発信する店が"生活文化"を発信し、それを受け止める人がまちをあるくというのが大きな流れかなと思います。會所がやってきたこととすごく理念が繋がっているのではと感じました。新しい"生活文化"を作るということについて、何か期待も含め感想など、例えばこういう人がきてくれれば、といったことも含めて、新しい三国らしい観光への展望などあるでしょうか。

八十島答えがなかなか出てこないんですけど、確かに下村さんの店が盆栽でよかったです。ああいう形態の店がなかったですよね。自分が観光客だったときにこういう店があるとふらっとよりたくなるんじゃないかなと思います。僕個人の意見ですが、文芸とか、古い街並みとか、歴史が三国にはありますが、このまちを大きく言えば高山とかさらに言えば京都みたいにはしたくないです。だれもが行くような街じゃなしに、三国に行ってきたんだけど、よかったよ、知らんの?とういう町にしたい。會所の考えとは違うかもしれないけど、晴れ晴れしい街ではなく、大人の隠れ家のような街にしたい。

中島:浜田さんどうですか、やってきたいことなど。

浜田:これからやってきたいことですね。ここ変えたいなと思った言葉があってですね、それでもいいですか。東大の資料の25pなんですが、家を壊さずに残している理由の一つとして、「(戻ってくるかわからない)子供世代のために遺している」というのがありますが、これを「将来戻ってくるから...」にしたい。トレジャーハントを、子供さん向け中心にやっていますが、町をめぐる、それから子供が三国を面白いなとずっと思っていてほしいです。面白いと思ってくれると、来てくれるかな、そう思います。

中島:空き家を保管しているだけでなく、将来の意思があると、子供が戻ってくる、そういった愛着があることが大事なんですね。また少し話を広げて、これが最後になると思いますが、谷根さんにお話しを伺います。企業、お店、いろんな立場の方がかかわられていると思います。そのなかで町家活用プロジェクト、協働しながらやって一定の成果が出たのではと思っていますが、次の段階となると公民学が新しい連携をしながらまちづくりするという段階に来ているのではと思っています。行政の支援、まちづくりへのサポートのしかたも色々変わってくるのではとも思います。よく議論させてもらっていますが、行政マンの立場から、いろんな人がどうまちづくりに携わってもらいたいか、それを行政はどうサポートしたいか、という所を伺いたいです。

谷根:いま、中島先生から行政の支援という言葉があったかなと思います。ここに来られるみなさんがそうだと思いますが、行政の支援というと補助金とかがすぐ出てくるかなと。県の補助、合わせてやったのですが、補助金というと難しい言葉ですが、やることに県なり市がお金をだすよ、でも決まり事があるのでそこから離れないでください、それが補助金だよといいます。どうしても市・県の考え方として、その人自身が手を動かしたくなりがちです。でも、町家PJは一定の成果を挙げていると判断していますが、補助金を出した団体が三国會所だったのが成果が上がった要因かなと思っています。三国會所は色んな職業・世代の地元の方がみんな入って、日々議論しながらやっているのが大きいですね。
下村さんの話に感心したのですが、盆栽というのはこういうものだというところから、時代が違うから変えねばというのが成功の秘訣だと思います。
時代時代に合って行政のやり方も変えていく必要があると思います。今日もそうですが、いろんな人と話をしてヒントを貰って行政として何ができるかという所で、押しつけ型のまちづくりではなく意見をくみ取りながら行政として何が支援できるかなという風に携わりたいと思っている。で、市の計画ではなく、行政のものは住民のみなさんも網羅していないと思うので、東大がいってくださったもの、伊東さん、下村さん、八十島さんなど、それぞれがまちづくりにかかわろうとしています。じゃあその時に、八十島さんから「行政はこうしてほしいな」というのがあったときに支援を差し伸べるような、そんな行政の存在になりたいと思っています。

中島:時間がだいぶ来てしまっているので、もし会場から何か発表や意見交換から聞いてみたいことなどありましたら聞きたいと思います。沢山の立場と言いながら男性の中高年が多く、女性の意見がない、思っていらっしゃる方もいると思います。いかがでしょうか。

(会場):学生さんのアンケートの結果が出てまして、三国でやりたいこととして、いろいろな希望がありましたが、それでマッチングした方はいらっしゃいますか?

中島:今回マッチングした物件はありません。我々も大学という立場なので、不動産仲介はまだできていないのが現状です。

(会場)市役所の方が、色々ヒント貰っていると話していましたが、こういうツアーをやって、三国で住みたいからツアーに参加していると思いますが、空き家の持ち主と見学に来られた方とかを市の方でマッチングを助けてくれるとかそういう場を作ってくれるといいなと思いました。詳細な手続きの段階になると、こういうことが不安だとか貸出期間がどうなるかとか、やっぱり業者が入らないとできないと思いますが、その前に希望者と所有者とかが直接話す場ができればいいなと思いました。

中島:まさに実際そろそろ動いて形にしていくべきという意見なのではと思いました。

谷根:空き家の増え方が顕著になってきており、不安になっています。しかし、行政が調査してもなかなか心を開いてくれないとか、不動産が嫌だというのが調査で明らかになったと思うんです。逆に不動産をどうにかしたいということも三国に期待しているという人もいるということも分かったので、是非、お互いの意向というか気軽に話し合える場とか、その後の法律的な手続きをスムーズに業者に受け渡すというようなことを可能にする必要は必ずあるなと思います。行政と不動産屋でやるのではなく、地元や企業の方、大学の方なども含めて組織など作れたらいいなと思います。

八十島:そのマッチング、僕も本当に大事だと思いますね。三国で商売をしたい、住みたいという方がいて、それをほっておくのも、もったいない。また東大から三国祭で宴会をしたいという提案があって、三国祭保存振興会も、祭りを盛り上げようと色々考えていますので、タッグを組んで、三国祭りをやっている一番いい時期に、街中の空家を一時的に借家としてお借りして、三国祭り時に三国の住民という体験をしてもらう、それをとっかかりとして、三国への移住を考えてもらう、そういうことが難しくないんじゃないかなと思っています。

中島:ありがとうございます。時間が来てしまったので、パネルディスカッションを終わりにしたいと思います。非常に多様な方から次のまちづくりへの期待感が感じられたかと思います。最後に西村先生、講評をお願いします。

西村:最後に八十島さんがおっしゃったこと、そうだと思います。城端では実際に空き家を借りてやると言うのが広がってきています。色んなことができそうです。動きが出てきました。あと下村さんの話、アンテナを張ってたからできたんだなと。あたらしい店はどこもはっきりと自分の店に対する主張があります。ある種生き方の主張。こういうことがだんだん広がっていく、伝染していくんだなと、そういう店に入るとそれを感じます。
 うちの学生が調査してくれて、私はそこで学んだことの一つとして、あるところまで空き地はわりとうまくウチマワシで流通していたんですよね、それはちゃんとした菜園だったり駐車場だったり、そういう意味では全ての空き地が悪いわけではなく、いい空き地もあったんだと。それが高齢化などでそうもいかなくなってると。周りは見てるので、周りの中でこれが生かされる可能性があるんだと見せてくれたんだなと思います。これは東京で考えていても全然分からない。東京の空き地は誰のものか分からないので、どうなるのか全然分からない。そういう人が日本の政策を作っているんです。でも三国は違って、誰のものか分かってるから、全然違う空き地・空き家問題だと思います。そこから何かを見出せると、大都市ではなく三国から日本の地方都市の普遍的な問題への答えにも近づけるはずです。
 だから三国方式というものができて、それが生まれようとしている、それが全国のこうした町に影響を及ぼす。そうした芽が出て、全国でも重要な先進事例になろうとしています。いまここは変わろうとしています。5~10年でいい方向に変わると思うんです。我々もできる限り応援したいと思っています。

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